「老犬にりんごって与えても良いの?」
「りんごを与えることで得られるメリットは?」
「どのように与えたら良いの?」
このような疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。
結論からいうと、りんごは栄養が豊富で、犬に与えてもOKな食べ物です。
しかしながら、老犬に与える際は注意しなければならない点があります。
そこで本記事では、老犬にりんごを与えるメリットやりんごの与え方、注意点などを解説します。
「老犬にりんごを食べさせたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
- りんごに含まれる栄養素やカロリー
- 老犬にりんごを与えるメリット
- 老犬にりんごを与える際の適量
- 老犬へのりんごの与え方
- 老犬にりんごを与える際の注意点
- 老犬にりんごジュースを与えても良い?
- 老犬がりんごしか食べないときの対処法
りんごに含まれる栄養素やカロリーのまとめ
そもそも、りんごにはどのような栄養素が含まれているかご存じでしょうか。
りんごはカリウムやビタミンC、食物繊維などを含む栄養価の高い果物で、イギリスでは「1日1個のりんごは医者を遠ざける」ともいわれています。
以下では、文部科学省が公表している「日本食品標準成分表2020年版」を元に、100gあたりのりんご(皮なし)に含まれる代表的な栄養素を表にまとめてみました。
エネルギー | 53kcal |
水分 | 84.1g |
たんぱく質 | 0.1g |
脂質 | 0.2g |
炭水化物 | 15.5g |
糖質 | 14.1g |
カリウム | 120mg |
ビタミンC | 4mg |
食物繊維 | 1.4g |
有機酸 | 0.5g |
上記のように、りんごにはさまざまな栄養素が含まれているワン
皮付きであればさらに栄養価は高く、皮をむいて与えるよりも皮ごと与えるほうが、健康面では望ましいとされています。
しかし、老犬になると消化機能が低下するため、りんごを与える際は消化しやすいように皮をむいてあげると安心です。
老犬にりんごを与えるメリットは?
老犬にりんごを与えることで得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 腸内環境の改善
- 高血圧の予防
- 免疫機能のアップ
- 疲労の回復を早める
- 食欲増進や水分補給につながる
1つずつ解説します。
腸内環境の改善
りんごには「ペクチン」という食物繊維の一種が多く含まれており、腸内の善玉菌を増殖させる働きがあります。
腸内環境が整うことで腸のぜん道運動が活発になり、便通の改善も期待できます。
老犬になると加齢によって便秘や下痢を起こしやすくなるため、ぜひ食事の中に取り入れたい栄養素のひとつです。
高血圧の予防
りんごには犬の主要必須ミネラルである「カリウム」が多く含まれており、体内の塩分を尿と一緒に排出しやすくして、血圧の上昇を防ぐ働きがあります。
しかし、カリウムの過剰摂取は高カリウム血症を引き起こす原因となり、四肢のしびれや嘔吐などの症状がみられる恐れがあるため、摂取量には注意が必要です。
免疫機能のアップ
りんごには「ビタミンC」が含まれており、免疫力の向上に役立つほか、コラーゲンを生成する働きがあります。
ビタミンCは本来、犬の体内で合成できることから、必ずしも摂取が必要な成分ではないと考えられています。
しかしながら、老犬になるとビタミンCを合成する機能が低下する傾向にあるため、食事から栄養を補うと良いです。
疲労の回復を早める
りんごには「有機酸」と呼ばれるクエン酸やりんご酸が含まれており、疲労の原因となる乳酸の蓄積を抑制する働きがあります。
これにより、疲労の回復を早める効果が期待できるため、体力が衰えがちな老犬や運動をたくさんおこなった日などに取り入れたい栄養素です。
食欲増進や水分補給につながる
老犬になると、新陳代謝や運動量の低下、感覚器の衰えなどによって食欲が減退しがちです。
犬は甘い味を好む傾向にあるため、果糖やショ糖などを含んだりんごを与えることで、食欲増進につながります。
愛犬がドッグフードを食べてくれないときには、少量のりんごをいつものドッグフードにトッピングとして加えてあげると良いでしょう。
また、りんごは約84%が水分でできているので、水分摂取量が減少したときの水分補給にも役立ちます。
ただし、りんごだけで1日に必要な飲水量を補おうとすると、カロリーや糖分の過剰摂取になってしまうので注意が必要です。
老犬にりんごを与える際の適量
りんごは栄養価の高い果物ではあるものの、与えすぎると栄養過多や肥満のリスクを高める原因になります。
健康を維持するためにも、りんごはおやつやトッピングとして適量を与えるようにしましょう。
環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」によると、おやつ(間食)の量は 1日あたりに必要なカロリーの20%以内に抑えること、と記載されています。
しかし、老犬になると新陳代謝や運動量が低下するため、1日に必要なカロリーの10%程度にとどめておくのが望ましいです。
以下が老犬に与えても良いりんごの目安量です。
体重 | 1日の必要カロリー | りんごの量(皮なし・生) |
---|---|---|
3kg | 160kcal | 〜30g |
5kg | 220kcal | 〜41g |
8kg | 310kcal | 〜58g |
10kg | 370kcal | 〜69g |
15kg | 520kcal | 〜98g |
20kg | 600kcal | 〜113g |
25kg | 1312kcal | 〜247g |
健康状態や運動量によって目安量は異なるので、あくまでも参考程度にとらえてください。
おやつのカロリー量は以下の計算式で算出できます。
おやつのカロリー量 = 1日の必要カロリー ÷ 10
たとえば体重3kgの場合、おやつのカロリー量は160÷10=16kcalとなります。
りんご(皮なし)100gあたり53kcalなので、体重3kgの老犬に与えても良いりんごの量は16÷53×100=30.1…、つまり約30gということになります。
りんごの重さは種類や個体によって異なりますが、一般的な中位のりんごの重さは1個あたり約300gです。
目安としては、りんご1個を10分の1にカットしたくらいの大きさが約30gになります。
なお、りんごをおやつやトッピングとして与える際には、主食であるドッグフードを10%減らし、1日の摂取カロリーがオーバーしないように調整してください。
老犬への適切なりんごの与え方
ここでは、老犬への適切なりんごの与え方をご紹介します。
与える際のポイントは以下のとおりです。
- 与える前によく洗う
- 皮をむいてから与える
- 食感を残したい場合は薄くカット
- 噛む力が弱っている場合はすりおろす
具体的にどのように与えれば良いのか、1つずつ見ていきましょう。
与える前によく洗う
老犬に限らずですが、犬にりんごを与える際は必ずよく洗いましょう。
皮の表面には汚れが付着しているだけでなく、農薬が残っているケースがあります。
食用の重曹を薄めた水などで丁寧に洗ってから調理すると安心です。
消化機能が低下している場合は皮をむく
りんごの皮には食物繊維のペクチンやポリフェノールなどの栄養分が多く含まれているため、皮をむかずに与えたいと考える方も多いかと思います。
しかし、犬は年齢とともに消化機能が低下する傾向にあり、消化不良を起こすと下痢や便秘、嘔吐などを招く恐れがあります。
りんごの皮は消化に負担がかかりやすいので、老犬にりんごを与える際は皮をむいてあげると良いです。
食感を残したい場合は薄くカットする
老犬にりんごを与える際は、食べやすいサイズにカットしてあげましょう。
シャリシャリとした食感を好む犬であれば、薄切りにして与えるのがおすすめです。
このとき、りんごが喉に詰まってしまわないように皮や芯、種を取り除き、小さくカットします。
普段食べているドッグフードと同じくらいの大きさを目安にすると良いでしょう。
噛む力が衰えている場合はすりおろす
加齢によって噛む力や飲み込む力が衰えている場合は、りんごをすりおろしてから与えるようにしましょう。
すりおろしたりんごは消化に負担がかかりにくいため、消化機能が低下している犬の食事にも適しています。
また、ドッグフードへのトッピングとしても利用しやすく、食欲がないときにおすすめの方法です。
老犬にりんごを与える際の注意点
老犬にりんごを与える際は、以下の点に注意しましょう。
- 与えすぎはNG
- 食べやすさを意識する
- 皮・芯・種は与えない
- アレルギーを引き起こす可能性がある
- 病気療養中の場合は要相談
1つずつ解説します。
与えすぎはNG
老犬にりんごを与える際は、あくまでもおやつやトッピングとして適量を与えるようにしましょう。
どんなに栄養価が高いものでも、過剰に与えすぎると栄養過多や肥満につながる恐れがあります。
肥満は「万病のもと」ともいわれており、免疫力の低下や関節のトラブル、糖尿病など、さまざまな病気のリスクを高めてしまいます。
また、「ごはんを食べてくれないから」といってりんごばかり与えていると、いつものドッグフードを食べなくなる可能性もあるでしょう。
先ほどもお伝えしたとおり、老犬に与えるりんごの量は1日に必要なカロリーの10%程度にとどめておくことが大切です。
食べやすさを意識する
老犬にりんごを与える際は、食べやすさを意識しましょう。
りんごは、いちごやバナナのように簡単につぶせる柔らかさではなく、大きくカットしたものだと喉に詰まらせてしまう恐れがあるため注意が必要です。
犬は食べ物を丸呑みしたり、早食いをしたりすることがあります。
また、老犬になると噛む力や飲み込む力も衰えるので、喉につまらないようにりんごを薄切りにする、もしくはすりおろしてから与えると安心です。
愛犬にりんごを与えたら、必ず食べ終わるまで見守るようにしてください。
皮・芯・種は与えない
老犬にりんごを与える際は、皮・芯・種を与えないようにしましょう。
りんごの皮には栄養が多く含まれており、健康に問題のない成犬であれば皮が付いた状態で与えてもかまいません。
しかし、りんごの皮は消化しにくいので、消化機能が低下する老犬には皮をむいて与えることをおすすめします。
また、りんごの芯や種にはごく微量の「アミグダリン」という物質が含まれています。
これ自体に毒性はありませんが、消化の過程で「シアン化水素(青酸)」が発生し、中毒症状を引き起こす危険性があるのです。
中毒を起こすと、下痢や嘔吐、呼吸困難などの症状が現れる可能性があるので、必ず芯や種をしっかりと取り除いてから与えるようにしましょう。
アレルギーを引き起こす可能性がある
老犬にりんごを与える際は、アレルギーを起こす可能性がある点に注意しましょう。
特にりんごをはじめとするバラ科の果物でアレルギーを起こしたことがある場合は、避けたほうが賢明です。
- りんご
- いちご
- もも
- 梨
- さくらんぼ
りんごをはじめて与える際は少量にしておき、必ず食後の様子を観察しましょう。
病気療養中の場合は要相談
糖尿病や心臓病、腎臓病などの病気療養中である場合は、事前にかかりつけの獣医師に相談してからりんごを与えるようにしてください。
というのも、持病がある犬の場合、りんごを食べることで食物繊維やカリウム、糖分などによって症状の悪化を招く恐れがあるためです。
また、肥満と診断されたうえで食事制限をおこなっている場合も、事前にりんごを与えても良いかどうかを確認するようにしましょう。
老犬にりんごジュースを与えても良い?
老犬の食欲がないときや水をなかなか飲んでくれないとき、中には「りんごジュースを与えたい」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
でも、老犬にりんごジュースを与えても良いの?
結論、果汁100%の「ストレートタイプ」であれば、少量のみ与えてもOKです。
人間用に加工された砂糖入りのりんごジュースや、ほかの果物が混じったミックスジュースなどは与えないでください。
文部科学省が公表している「日本食品標準成分表2020年版」によると、りんご(皮なし・生)に比べ、実はストレートタイプのりんごジュースのほうがカロリーが低いことがわかります。
りんご(皮なし・生) | りんごジュース(ストレート) |
---|---|
53kcal | 43kcal |
とはいえ、「愛犬が喜んでくれるから」といってりんごジュースを与えすぎると、カロリーや糖分の摂りすぎになり、肥満のリスクが高まります。
そこで、気になるのは老犬に与えても良いりんごジュースの目安量ではないでしょうか。
たとえば体重3kgの場合、1日の必要カロリーは160kcal、おやつのカロリー量はその10%の16kcalです。
りんごジュース(ストレート)100gあたり43kcalなので、16÷43×100=37.2…となり、約37gまでは与えても良いことになります。
水分補給の目的でりんごジュースを飲ませる際は、がぶ飲みや糖分の摂りすぎを防ぐためにも水で薄めてあげるのが良いでしょう。
老犬がりんごしか食べないときの対処法
ここでは、老犬がりんごしか食べないときの対処法について解説します。
犬がりんごしか食べないとどうなる?
りんごには果糖やショ糖が含まれており、犬にとって嗜好性の高い果物です。
頻繁にりんごを与えてしまうと甘みがクセになり、「ドッグフードを食べない」「りんごしか食べない」といった事態を招く恐れがあります。
いくら栄養価の高い果物といっても、りんごには犬の生存に欠かせない成分がすべて含まれているわけではありません。
犬の食性は雑食傾向の肉食であるため、良質なたんぱく質や脂肪、炭水化物などを必要とします。
犬(成犬)の三大栄養素の割合は以下のとおりです。
- たんぱく質:25%
- 脂肪:15%
- 炭水化物:60%
参照:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
このように、りんごだけを食べ続けていると犬にとって必要な栄養を十分に得られず、体のさまざまなところにトラブルが起こりやすくなるため注意が必要です。
りんごしか食べないときの対処法
「老犬がりんごしか食べない…」というときは、以下の方法を試してみてください。
- 新しいドッグフードに切り替える
- ドッグフードをふやかして香りを強める
- フードにトッピングを加えて嗜好性を高める
- 手作りフードを与える
新しいドッグフードに切り替えるとスムーズに食べてくれるケースが多いです。
老犬に与えるドッグフードは、犬に必要な栄養素をバランスよく含む「総合栄養食」と明記されたものを選ぶようにしましょう。
フードに切り替える際は、消化に負担をかけないように新しいフードを少量ずつ混ぜ、徐々に切り替えていくと良いワン。
ほかにも、ドッグフードをふやかしたり、トッピングを加えたりすることで食欲増進が期待できます。
噛む力や飲み込む力が衰えている場合には、缶詰などのウェットフードを与えるのも良いでしょう。
どうしてもドッグフードを食べてくれないときは、手作りフードを与えるのがおすすめです。
肉や魚、乳製品、卵といった動物性たんぱく質を含むレシピを与えるようにします。
老犬になると新陳代謝が衰えるため、高脂肪な食材は避けて、低脂肪な鶏肉や牛肉、ヨーグルトなどを活用すると良いでしょう。
「手作りフードはカロリー調整や栄養バランスが難しい…」
「老犬の体調に合わせたごはんを作れたらいいのに…」
そんな方は、老犬の手作りごはんについて学べる本をぜひ読んでみてください!
試行錯誤してもりんごしか受け付けないという場合には、1度かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
病院によっては最終手段として好きな食べ物を与えても良いといわれるケースもあるようです。
老犬にりんごを与える際はあくまでもおやつ程度に
栄養価の高いりんごは、老犬に与えても良い果物です。
水分やカリウム、食物繊維などが含まれているため、食欲がないときや水分摂取量が減少したときに役立つほか、腸内環境の改善なども期待できます。
ただし、りんごを与えすぎると栄養バランスが乱れ、肥満や糖尿病のリスクが高まります。
老犬にりんごを与える際は適量を守り、あくまでもおやつやトッピングの範囲で与えるようにしましょう。
また、喉に詰まらせないようにりんごの与え方には十分に注意してください。